その少女には顔がなかった
2007年3月16日夕暮れ時、ふと風に誘われ外に出た。
時間が時間だけに人通りも少なく涼しい風が吹いていた。
日中のやうな照りつける日差しと人々の熱気は、
今やあの夕日と同じく向こうへと行ってしまったのであろう。
そのままぶらぶらと散歩をしていると
なにやら道端に櫛(くし)が落ちているではないか。
その櫛を拾い上げ辺りを見渡すと「ぽつん」と少女が一人。
少女は橋の方へとしずしずと歩いて行く。
この拾い上げた櫛の豪奢さにひけを取らぬそれまた煌びやかな
着物を着た少女だったので、私は直感的に持ち主だろうと思い
その橋へ歩いて行く少女に大声で呼びかけた。
だが少女は気づいた様子も無く歩いて行く。
ならばと思い私は全速力で駆け寄ると肩を掴んで
こちらを振り向かせた。
その少女には顔がなかった
いや、顔と言うのは語弊があるかもしれない。
その娘には顔のパーツがただの1つも存在していなかったのだ
そのくせ「※※※※」などと宣(のたま)ふ。
―嗚呼、何て無駄の無い顔なのだろう―
私の心に恐れと呼ばれるモノが入り込むその直前、
そんなことを思った・・・
(第4話へつづく)
時間が時間だけに人通りも少なく涼しい風が吹いていた。
日中のやうな照りつける日差しと人々の熱気は、
今やあの夕日と同じく向こうへと行ってしまったのであろう。
そのままぶらぶらと散歩をしていると
なにやら道端に櫛(くし)が落ちているではないか。
その櫛を拾い上げ辺りを見渡すと「ぽつん」と少女が一人。
少女は橋の方へとしずしずと歩いて行く。
この拾い上げた櫛の豪奢さにひけを取らぬそれまた煌びやかな
着物を着た少女だったので、私は直感的に持ち主だろうと思い
その橋へ歩いて行く少女に大声で呼びかけた。
だが少女は気づいた様子も無く歩いて行く。
ならばと思い私は全速力で駆け寄ると肩を掴んで
こちらを振り向かせた。
その少女には顔がなかった
いや、顔と言うのは語弊があるかもしれない。
その娘には顔のパーツがただの1つも存在していなかったのだ
そのくせ「※※※※」などと宣(のたま)ふ。
―嗚呼、何て無駄の無い顔なのだろう―
私の心に恐れと呼ばれるモノが入り込むその直前、
そんなことを思った・・・
(第4話へつづく)
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